Vi―お見合い騒動―

「はぁ!? あたしに縁談!?」

 Piltover中に響き渡るような大声を出されて、Caitlynは露骨に顔をしかめた。

「そうよ、ありがたく思いなさい。あなたのようなじゃじゃ馬に乗り手がつくことをね」

「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ! なんであたしが!」

 突然の話に、ViCaitlynに鼻息荒く詰め寄った。

「署長がお世話になっているお知り合いが結婚相手を探しているそうでね、うちの警察署から候補を出すことになったのよ」

「じゃあお前が受ければいいじゃねえか」

「あら、二人しかいない女のうち片方が断れば、もう片方にお鉢が回るのは当然でしょう?」

 そう言うCaitlynの表情は、もう決定を変える気がないことを語っている。

「まあお前をもらうような男なんかいねえよなあ、こないだの男とも別れ……でっ!」

 Viが険悪な気分になってCaitlynが別れたばかりの恋人の話を持ち出そうとした瞬間、分厚いファイルが唸りをあげて彼女の顔面に直撃した。

「鉛玉をぶち込まれたくなかったら、二度とその話はしないことね」

 Caitlynはそう言ってにっこりと笑った。普段は口の減らないViだが、その笑顔に背筋がうそ寒くなるものを感じて、さすがに黙り込んだ。

「三時に署長室に行きなさい。私は調査があるから出かけるけど、くれぐれも失礼のないようにするのよ」

 氷のような視線でViをひと睨みし、Caitlynは愛用のライフルを背負った。手早く荷物をまとめて肩にかけ、さっさと部屋を出ていく。

「ったくよお。これで相手がイケメンじゃなかったら、ボイコットしてやるからな……」

 Viは椅子にそっくりかえって、大きくため息をついたのだった。

 

 時間通りに署長室にいくと、「ああ、よく来てくれたね」と人の好さそうな笑顔を浮かべた署長が待っていた。

「いやあ、迷惑をかけることになってしまって悪いねえ。お世話になっている方に、息子にいい結婚相手を紹介してくれないかと言われてね。断り切れなくて、なんとか探そうと思ったんだが、君たちくらいしか浮かばなくて」

 禿げ頭を撫でまわしながら、署長は事情を説明する。

「はぁ……そうなんすか」

 Viが曖昧な表情で相槌をうつと、「あ、ほんとに結婚とか、そういうことは考えなくてもいいから!」と、署長はあわてて手を振った。

「ちゃんとその人と会って話をして、角が立たないように断ってくれたらそれでいいんだ。私は相手を探した、だけど二人はフィーリングがあわなかった。そういう形にすれば、私の面目も保たれるし、すべて丸く収まるってわけだから。もちろん気に入ったらお付き合いしてもいいけどね。そこは若い二人におまかせということで」

 そう言ってぐししと笑う署長を見て、Viは鼻にしわを寄せた。

「それ、給料でるんスか」

 Viが聞くと、署長はニヤリと唇の片方を引き上げた。人差し指と親指で、金のマークをつくる。

「君がちゃんとやってくれるなら、今月の給料1.5倍」

「ノった!」

 二人はがっしりと握手を交わしたのだった。

 

 お見合い当日の朝、Viは鏡の前で腕を組んでいた。

「ちゃんとやるとは言ったもの、よそ行きの服なんざもってねえし……準備しとけばよかったぜ」

 昨日、さっさと定時で帰されたViは行きつけの飲み屋をハシゴし、日付が変わったころに酔っぱらって家にたどり着いた。頭の片隅に「ちゃんと明日の準備をしてから寝なさいよ」と口うるさく言ってきたCaitlynの言葉は残っていたが、彼女は面倒くさくなってそのまま寝てしまったのだ。

 クローゼットの中は実用性重視の服ばかりだ。わずかにある彼女一流のおしゃれ着は、デートにはそぐわない。

 結局、黒のタンクトップの上に、七分丈の白いボートネックのシャツを着てみた。広い襟ぐりから、黒い肩ひもがのぞいている。スカートなんてヒラヒラしたものは持ち合わせていないので、スキニーなジーンズに皮でできた明るい茶色のベルトを通すことにした。

「まあ、こんなもんだろ。女らしさなんてもんは取り扱ってねえしな」

 鏡の前でポーズをとってみて、一度うなずく。

「うっわ、ヤベぇ! 遅刻する!」

 気が付けば待ち合わせの時間がせまっていた。財布を尻のポケットに突っ込んで、Viは転げるように家を出た。

 待ち合わせ場所についてみると、時計を気にしながらキョロキョロしている男がいた。

 どう声をかけていいかわからず様子を見ていたら、男があっと気づいて、こちらに歩いてくる。

「こんにちは。えーっと、Viさんですか?」

「お、おう」

「今日はよろしくお願いします」

 嬉しそうにニコニコと笑いかけられて、Viは気をのまれてうなずいた。

 ――こりゃまたイケメンじゃねえか。なんだってこんな男が、縁談なんか探すかね。

 男はウェーブのかかった濃いブロンズの髪の毛をなでつけ、誠実そうな青い瞳をしていた。紺色のポロシャツの胸には、白抜きでポニーの刺繍がされている。服をきていてもわかる逞しさが、鷹揚な雰囲気に拍車をかけていた。

 Viがまじまじと見つめていると、彼は「俺、変なかっこうしてますか?」と気恥ずかしげに笑った。

「いやいや、ぜんぜん!」

 あわてて否定すると、「そうですか、それはよかった。気合を入れてきすぎたかと思いました」と大げさに胸をなでおろして見せる。

「それじゃあ行きましょうか」

「行くってどこに?」

Viさんが好きそうなところですよ」

 そう言って男は、イタズラっぽくウィンクをしてみせた。

 

「ひゃっほおおおう!!」

 誰よりも大きいViの歓声が、空高く響き渡った。同じようにそこかしこから、悲鳴とも歓声ともとれないような声があがっている。

 Viは彼に連れられて、Piltoverで一番の遊園地にやってきたのだった。

「次はアレ! アレ乗ろうぜ!」

「い、いや……俺はちょっと疲れて……」

「みーずくさいこと言うなって! な?」

 そう言ってViにがっしりと肩を組まれ、彼は連行されるかのように次の絶叫マシンに連れて行かれる。天を仰いだ顔は、「もう勘弁してくれ」と語っていた。

 遊園地に着いた瞬間のViは、「おおー!」「すげぇ!」とキラキラした目でまわりを見まわしつつも、まだ遠慮があった。しかし彼は彼女を、ジェットコースターに連れて行ってしまった。一度思い切り叫んでしまうと、Viの緊張と遠慮は消え去り、もはや彼女を止めるものはなにもなかった。

 Viに連れまわされて絶叫マシンという絶叫マシンに乗り、魔法技術を駆使した最新鋭のホラーハウスにまで連れ込まれ、彼はぐったりと疲れ切った顔をしていた。

「おいおい兄ちゃん、大丈夫かぁ?」

 いまさらのように心配するViに、彼は「ああ、うん……」と青い顔を向けた。

「わりぃ。あたし絶叫マシンとかそういうもんに目がなくてな……やっぱスリルがねえとつまんねーじゃん? 飲み物買ってくるからそこ座ってろよ。なにがいい?」

「紅茶とかコーヒーとか、落ち着くものがいいかな」

「わかった」

 手近な店を探して、紅茶とコーラを買う。ついでにチュロスを買ってかじりながら戻ると、彼は電話でぼそぼそと喋っていた。

「はい……そうですね、それでお願いします。それでは」

 そう言って電話を切った彼に、後ろから声をかける。

「よう。買ってきたぜ」

「ああ、ありがとう」

 彼が熱い紅茶をすすって、ふぅと一息つくのを見ながら、Viはあっという間にコーラを飲み干してしまった。しばらく休憩すると元気を取り戻したらしく、彼は「行こうか」と立ち上がった。Viチュロスの最後の欠片をぽいっと放り込んで、「次はなに乗る?」と笑った。

「あれなんかどうかな」

 そう言って彼がさしたのはコーヒーカップだ。

「うへぇ、あたしあんなのに乗るガラじゃねぇんだけど」

「いいじゃないですか、デートっぽいこともしておかなくちゃね」

 今更のようにデートであったことを強調されて、Viはなんとなく気恥ずかしくなる。男と二人で遊ぶのを気にするようなタチではないが、デートというふわふわした特別な関係を匂わせるような言葉を使われると、途端に歯が浮くような感じがする。

「お、おう……そうだな」

 Viがそう言って目を逸らすと、男は「何か変なこと言いましたか?」と首をかしげた。

「いやいや! さっさと行こうぜ!」

 そう言ってViはゲートをくぐり、さっさとコーヒーカップの列に並ぶ。中には、ぐるぐると勢いよくカップを回す子供に、「もう、酔っちゃうわよ」と声をかけている母親や、二人きりのピンク色の世界をカップの上に作り出しているカップルがいる。

 ゲートが開くと、Viは気恥ずかしさを振り払うようにさっさとカップに乗り込んだ。しばらく待っていると、メロディックな音楽とともにカップが動き始める。

 Viがやる気満々でがっしとハンドルを掴むと、「ここは俺が回しますよ」と、そっと手を重ねられた。不意に男の骨ばった大きな手に触れられたViは、火傷をしたかのように手をひっこめて、「ま、まかせた!」とカップのふちに肘をかけてよそを向いた。顔がカッと熱くなる。

 ――あー、情けねえ。このあたしともあろうものが、まるで生娘じゃねえか。

 恥ずかしさをごまかすようにひとりごちていると、男はゆっくりとカップを回しながら、Viのほうをじっと見た。

「なんだよ」

 唇をとがらせるViに、「いえ、案外女の子らしいところもあるんだなと思って」と男が含み笑いを漏らす。

「はぁ!? なに言ってんだよ!」

 きまり悪くなったViは、ふんと鼻をならしてそっぽを向いた。そんなViの耳がかすかに赤くなっているとのを見て、男はこらえきれずに笑いだす。

「おい、笑うなよ! 笑うなって、こら!」

 慌てるViを尻目に、男はいつまでも楽しそうに笑い、しまいにはViもつられて笑いだしてしまうのだった。

 

 夕方になると、「ディナーの予約をしてあるので行きましょう」と男に言われて、二人は連れ立って遊園地を出た。彼が準備していた車に乗って、街のほうへ走る。やがて男は車を停めて、Viをおろした。

「あのよ、どう見てもこれはレストランじゃねぇよな?」

 Viが連れてこられたのは、見るからにきらびやかなブティックだった。

「せっかくのディナーですから、おめかししていただこうと思って」

 男はViを奥に案内し、店員に「注文したものを彼女に着せてくれないか」と頼んだ。

「あの遊園地での電話はそういうことか……ていうかこんな店で服買えるような金は持ってねぇぞ」

「安心してください、今日のデートを記念して、俺からのささやかなプレゼントです」

 男は手を広げておどけるように言い、Viは店員に押し込まれるように奥の部屋へ入った。中からごそごそと服をいじる音と、「ふんっ!」「これどうやって着るんだ?」「やだよ、それは脱がねえよ」と押し問答をする声がする。

 しばらくたったころ、店員が「終わりましたよ」とやり遂げた顔で出てきて、試着室のカーテンを勢いよく開けた。

 中から出てきたのは、鮮やかな赤いドレスに身を包んだViだった。右肩は惜しげもなくさらされ、左肩からバラをあしらった幅広の肩紐が斜めに通っている。背中の部分は大きくあいていて、ぴったりと身体に沿うようなラインはViの女性的な部分を強調していた。床ギリギリまで伸びる裾は、いくらかひだをとっているもののすっきりとしたストレートで、Viの持つ快活な印象を損なわないようにつくられていた。

 着慣れない服を身にまとい、落ち着かなげに立っているViは、巨大なガントレットをつけて悪人を殴り倒している姿とは別人だった。

「驚いたな――きっと似合うだろうとは思っていたけど、見違えるようだ。とても綺麗ですよ」

 男の手放しの賛辞に、Viは「そりゃあ、あたしはなにを着ても似合うからな」と憎まれ口で答える。しかし嬉しさが隠しきれずに、頬が得意げにぴくぴくと動いている。

 男はViに手を差し伸べ、「それではディナーへ参りましょうか」とまじめくさって言った。

「よろこんで」

 そう答えて、Viはそっとその手をとった。

 

 案内されたのは、両手を広げて客を歓迎するような雰囲気の漂う、開放的なレストランだった。机と机の間はひろくとられ、一面の窓からはライトアップされた見事な庭園が望める。テーブルにかかった真っ白なクロスが、天井からぶら下がるシャンデリアのオレンジ色の光で温かみのある色を宿していた。居並ぶ客たちは上品にナイフとフォークをあやつり、楽しげに晩餐を楽しんでいる。

 はじめこそ場違い感に緊張していたViも、食事が進むうちに打ち解け、自然に笑うようになっていた。

「しっかしこりゃうまいな! ガ、ガ、ガランティーヌ……に、テルミドール……だっけ?」

「正解です。ガランティーヌは鶏肉に詰め物をして調理したもので、テルミドールはエビを殻ごと半分に割って、ソースやチーズをかけて焼いたものです。どちらも食べごたえがあっておいしいでしょう?」

 Viは口いっぱいに頬張ったまま、ブンブンと首を振った。お高いレストランが出すのは、広い皿にぽっちりしか乗っていなくて、食べたのか食べてないのか分からないような料理ばかりだと思っていたので、がっつり腹にたまるような料理がでてきて、Viは夢中になっていた。

 男はそんなViを、優しいまなざしで見つめていた。

 デザートまで平らげた二人は、食後に酒を飲みながら話に花を咲かせていた。といっても、Viが一方的にまくしたて、男が相槌を打つといった具合だった。

「へぇ、それでそのあとどうなったんです?」

「そんでCaitのやつ、あたしを囮にしてさっさと逃げちまいやがってさ。まったくあの時は死ぬかと思ったぜ。まぁ、必死で逃げ回ってる間にあいつがそいつらを狙撃してさ、数が減ったところをあたしがドカーンよ。チームワークってわけさ」

「一件落着ってわけですか」

「それがそうでもねぇんだよ! ここだけの話、そいつらと商売してた奴らがあたしたちのこと狙ってるらしくてさあ。Caitは『あんたのやり方が悪いのよ』なんて言いながらカリカリして、今日も調査に出てやがる。よくやるぜ」

「あなたはCaitlynのことを信頼しているのですね」

 そう言って男が笑うと、Viはげぇっと舌を出した。

「そんないいもんじゃねぇよ、あたしはあいつにこき使われてるだけさ」

 二人の夜は和やかに過ぎていき、やがて別れの時刻が近づいてきた。

「おっと、そろそろ時間ですね。それで、あの……」

「おう、なんだ?」

 男が言いよどむと、ご機嫌のViはにかっと笑って先を促した。

「そ、それでですね! お、俺と――また会っていただけないでしょうか!」

 言われて、Viは目を見開いたあと、「あ、えっと、そうだな。その……」と視線をさまよわせた。

 二人の間に微妙な沈黙がおりる。

 Viがなんと言っていいかわからず、でも何か言わなければと口を開いた瞬間、轟音が響き渡った。

「見つけたぞぉ、Vi!」

 はっと二人が庭園のほうを見やると、武器を構えた男たちが押し寄せていた。爆撃によって美しい庭園は、見るも無残な姿になっていた。飛び散った枝をチロチロと炎が舐めている。

「おめぇが男と遊園地なんぞをほっつき歩いてるって報告がはいったときには耳を疑ったが、どうやら本当だってみてえだなぁ! 綺麗なおべべ着て満足かぁ?」

「ちっ、無粋な野郎どもだぜ……」

 先ほどまでの穏やかな表情が嘘のように険しい顔になり、Viはぐっと身を乗り出した。

「い、いけません!」

 男が止めようとするのと、武装した男たちのうちの一人がロケットランチャーを放ったのが同時だった。

「吹き飛べぇ!」

 男がそう叫ぶと同時に、空中でロケットランチャーが爆発した。

「なにっ!?」

 男たちがキョロキョロとあたりを見回していると、機械で増幅された声があたりに響き渡った。

「あなたたち、今すぐ投降するなら無傷で逮捕してあげるわ。だけど抵抗するなら、身の安全は保証しないわよ」

 その声に、Viがはっと顔をあげた。あたりに響き渡る大声で叫ぶ。

Cait! てめぇどこにいやがる!」

「スナイパーが居場所を教えるわけないでしょう。いいからさっさと店の裏に出なさい。あなたの装備をもってきてあるわ」

「やけに準備がいいなぁ、おい!」

「そりゃそうよ、そいつら私が調査してた犯人だもの」

 そう言ったあと、Caitlynはふっと言葉を切った。

「私の追跡が甘くて、彼らを止めきれなかったわ。そのことだけは謝っておくわね」

「なに言ってんだカップケーキちゃんよぉ、悪人の顔をぶん殴るチャンスをくれて、ありがたいくらいだぜ」

 そう言って、Viはにたぁっと唇の端を釣り上げた。ドレスの裾を引き裂いてぎゅっと結び、髪を結い上げていたピンを外す。そのまま出ていこうとして、思い出したようにくるっと振り返った。

「悪いな、どうにも次の機会はなさそうだ。あたしが事件を追っかけて、事件はあたしを追いかける。このイタチごっこはしばらく終わりそうにないんでね。あたしはならず者たちと、毎日のように縁談してんのさ」

 そう言ってから、Viは不意に真顔になった。

「あんたはいい男だ、このあたしが保証するんだから間違いない。だからもっと平和な女を見つけて、そいつと家族を作りな。あんたたちが暮らすことになるPiltoverの平和は、あたしが守ってやるからさ」

 Viはそれだけ言って、たっと駆けだした。店の裏に止めてあるトラックに乗り込み、手になじんだガントレットを装着する。

 ――あたしには平和なんぞ似合わねえ。だけどまあ、なかなか悪くなかったよ。

 心のうちで呟きながら、ならず者たちの前に立つ。

 

It's a shame. I've got two fists, but you've only got one face(残念だね、拳が二つあるのにあんたたちの顔が一つしか無いなんてさ).

 

 そう言って、Viは握り締めたガントレットの拳を、ガインと打ち鳴らした。

 

 

「なんだこりゃあ!」

 次の日の朝。Piltover中に響き渡るような大声を出されて、Caitlynは露骨に顔をしかめた。

「あなたちょっとは静かに驚けないの?」

「静かだったら驚いてるとは言わねえだろうがよ、それにしてもこりゃいったい……」

 Viのデスクの上には、いつものように整理されていないファイルと、食べかけのスナックと、よくわからない雑多なものが積み上げられていた。そしてその上に、収まりきらないほどのバラの花束が乗せられている。

 花束には手紙が挟まっていた。Viがおそるおそるそれをつまみあげて開くと、中にはこう書かれていた。

「昨日はありがとうございました。Piltoverの平和を守るあなたの背中に、どうやら俺は恋をしてしまったようです。よければ結婚を前提にお付き合いしていただけませんか」

 Viは思わず額に手を当てた。それはCaitlynViに呆れたときに、よくやるポーズだった。

「勘弁してくれ……」

 その後、Piltoverの警察署には毎日のようにバラの花束が届けられ、殺風景な署内は場違いなバラでかざられるようになるのだった。